2019年7月21日日曜日

火鉢クラブ再始動!「電気を使わない’油団’納涼会」開催!


【今回の納涼会】
敷くだけで室温が少し下がると言われ、表面がツルツルとして、座るとひんやりする「油団(ゆとん)」という和紙の夏敷物を、古民家のお座敷に敷いて涼みます。この油団、今では全国で唯一、福井県鯖江市の「紅屋紅陽堂」という表具店さんで作られています。それをお借りして設えます。また、姫路の「明珍本舗」さんから、鉄の火箸でできた明珍火箸風鈴をお届けいただき、その軽やかな音色を楽しんでいただきます。
<油団納涼会 第1弾>
①登録有形文化財の「島薗邸」で電気を使わない「油団」納涼会開催
 東京都文京区千駄木の築87年の島薗邸をお借りして、電気を使わない、自然の涼しさとはどういうものかを体験する納涼会を開催したいと思います。
◾️期日は8月13日〜15日のお盆の3日間(11時〜19時)*最終日は18時まで
◼︎参加費1000円(税込)
◼︎場所:島薗邸 文京区千駄木3−3−3
◼︎参加費1000円(税込)冷たい緑茶と種抜き梅干しつき
「涼しい」をテーマにしたパンフレット「FIRE 増刊号」もつきます
今回の納涼会で紹介する「油団」と「明珍火箸風鈴」の紹介記事のほか、
 「涼しい」をテーマにしたエッセイなどを掲載。


見どころ①登録有形文化財の歴史的建造物「島薗邸」
島薗邸は脚気とビタミン不足との関係を発見した東大医学部教授島薗順次郎氏の長男島薗順雄(のりお)氏が結婚を機に昭和7年に建てた家です。設計者は銀行建築などで知られる矢部又吉。洋館部分にはドイツ風の意匠が随所に見られる和洋折衷の建築。建物を見るだけでも価値のある邸宅です。
このお宅の庭に面した1階座敷に油団を敷いて、涼める空間を作ります。
見どころ②敷くだけで室温が下がる和紙の夏敷き「油団(ゆとん)」
見どころ③「明珍火箸風鈴」の驚くほど涼やかな音色

【納涼会開催内容】
1階・庭に面した座敷にて・・・「電気を使わない”油団”と”明珍火箸風鈴”納涼会」
座敷には敷くだけで涼しくなるという「油団」を敷き、氷柱を立て、鉄の火箸で作った明珍火箸風鈴の軽やかな音色で涼んでいただきます。
★納涼会は基本的に油団を敷いた部屋で冷たいお茶を飲みながらくつろいでいただくカフェのような形です。入場料で暑気払いのお茶などがつきます。
*写真:油団を敷いた部屋(これは島薗邸ではありません)

1階・洋館部分ダイニング・・「上野不忍池納涼写真展〜MIRROR WORLD」
 私が撮り溜めた不忍池の水面に映る四季を涼しげな透明アクリルにプリントして、まるで水面を覗き込んでいるかのような写真を展示します。 水面に映った景色なので、多くは天地を逆にしてプリントしました。水面に映った鏡の中の世界を逆さまに見ると、もうひとつの世界が立ち上がりました。今、AIの発達で、バーチャルなもうひとつの世界「MIRROR WORLD」が現実的に作られ始めています。水面に映るもうひとつの世界が明るいながらも無機質に見えるのは、そうしたバーチャルなミラーワールドの在り様を映しているからかもしれない・・・。現実の世界と水面に映った世界が織りなす風景。どちらがあなたにとってリアルでしょう。ぜひご覧ください。
*写真自体はものにより天地を逆さにしているのみで、加工などはしておりません。
 すべて、オリンパスミラーレス一眼のオート設定で撮影しており、撮影データを手を加えずプリントしております。。
*アクリルシートにプリントしています
*島薗邸1階ダイニング

2階・洋間および座敷・・・「読むと涼しくなる古本&新刊市」ほか
 複数の古書・新刊書店さんに「読むと涼しくなる」をテーマに本をセレクトしていただき販売します。可能であれば、油団を作っている鯖江市の工芸品などの紹介と物販も行えればと思います(交渉中)。
*島薗邸2階洋間
*2階のステンドグラス
*島薗邸2階座敷

②「涼しい」をテーマにしたパンフレット「FIRE 増刊号」発行
 今回の納涼会で紹介する「油団」と「明珍火箸風鈴」の紹介記事のほか、「涼しいってどういうこと?」をテーマにしたエッセイなどを掲載予定。

③古民家スペース「そら塾」での油団体験
◼︎8月17日(土)〜25日(日)13時〜20時
◼︎入場料500円(飲み物・イベントなどは別途)
*この会期中で休館日も設けますが、まだ日程検討中ですので、決まり次第、告知いたします。
 島薗邸での納涼会終了後、台東区根岸の古民家スペース「そら塾」に油団を敷いておきます。こちらでもゆる〜く油団を体験していただければと思います。
また、各種イベントも設定する予定です。情報告知、少々お待ちください!

【納涼会の主役「油団」のスゴさを紹介します】
「柱影映りもぞする油団かな」
俳人の高浜虚子が油団を季語に詠んだ句です。
丁寧に使えば100年もつといわれ、使い込むごとに表面がツルツルと飴色に輝き、鏡のようになります。油団を庭に面した部屋に敷くと、庭の風景が映り込み、その視覚的な美しさからも涼しさを感じられる。
敷くだけで室温が少し下がるといわれていて、座るとひんやりします。
日本の伝統的な技術を駆使して作られた、五感で涼しさを感じられるすばらしい夏敷です。
油団は日本の伝統的な「表装」の技術で作られます。
和紙15枚ほどを重ねて、薄く糊付けし刷毛で10000回以上も叩き、それらの和紙を分厚い1枚の敷物に繋げて作ります。そこに荏胡麻の油もかけるため、油団といいます。
それを作っている唯一の場所が福井県の鯖江市にある表具店・紅屋紅陽堂さんです。なんと、作成には3人掛かりで1ヶ月以上かかり、1畳15万円ほどもするとか。
電気を使わずとも室温が下がるというなんともエコで不可思議、かつ優美なインテリアです。
納涼会で使用する油団はこの紅屋紅陽堂さんからお借りする予定です。
お借りするものは、長年使用して使わなくなったものですので、多少年季は入っていますが、それだけに、100年使えるという油団の本質を感じていただけると思います。

【たかが火箸と侮るなかれ!「明珍火箸風鈴」の音色が伝える涼しさ】
納涼会では、火鉢クラブの火鉢とも関係の深い、鉄の「火箸」で作られた「明珍火箸風鈴」も設えようと思います。炭火による手打ちの伝統的な技術で作られるこの風鈴は大変音の良い風鈴として知られ、その涼やかな音色もみなさんに是非、体験していただきたいと思っています。
なんとこの音色、『触れ合った瞬間の強い音、幅の広い余韻。この二つを併せ持った生音源は他にはない』ということから、ソニーの音響機器の音質検査に使われているのだそうです!
音は波であり、遠くで生まれた空気の流れ=風という別の波が風鈴を揺らし、音という波に姿に形を変えて私たちの元に届く。触覚で感じる風が耳で感じる音に姿を変える瞬間です。心地よい風の方が心地よい音色が鳴るそうです。明珍火箸風鈴はそんな微妙な風の種類の違いに敏感に反応し、音の違いを生むのです。
YOUTUBEなどの動画でも音はお聞かせすることはできるのですが、やはり生で聴くのとは違います。
どういう風が流れた時にどういう音が鳴るのか・・・。風を感じなくても音だけがなることもあるそうです。人が感じられないレベルの空気の流れをこの風鈴は感じ取り、音という形で伝えてくれます。
熱した鉄の棒を叩いて火箸の形にすることで、この繊細な音が鳴るようになります。熱して打つことなく、ただ同じ形に鉄を鋳造しても、この音は出ないのです。また、合わない2本を組み合わせると、風鈴の音は不協和音を奏でます。どういう組み合わせだと良い音になるかは、職人の勘。触ればわかるのだそうです。
天使の羽音のような繊細な音は、熱い鉄を打つ職人の手仕事に支えられています。
納涼会では、そうした明珍火箸風鈴の不思議な部分も体験してみてください。

【なぜこのプロジェクトを成功させたいのか】

8回目の夏・ほんものの涼しさを忘れたくない。そして、火鉢クラブをもっと知ってほしい
今回のプロジェクト、古民家に「油団(ゆとん)」という夏の敷物を敷いて自然の涼しさを楽しむ「電気を使わない納涼会」は、かつて東日本大震災直後の夏にも開催しました(今回とは別の古民家で行いました)。このときは節電に対する意識も高く、とてもたくさんの方にご来場いただけましたが、あれから8年、節電を呼びかける声もあまり聞こえなくなってきています。
また、東京は五輪を来年に控え、古いものがスクラップされ、新しい建物が建てられ、どんどん変わりつつあります。世の中は新陳代謝していくものではありますが、その中で、残していくべき伝統技術や建築物までが加速度的に失われている気もします。だからこそ、今、東京で、再びこの会を開催したいと思いたちました。
*写真:2011年8月「火鉢クラブ的納涼会」@上野桜木市田邸

*写真:2011年8月開催の火鉢クラブ的納涼カフェのチラシ

火鉢クラブの活動をしながら感じることがあります。
いくらSNSでのやりとりが普通になっても、AIが発達しても、一つの火を囲みながら語り合う人と人との対話にまさるコミュニケーションはないということ。そして、いくら3Dプリンターが正確に同じ製品を作れるようになっても、熟練の手仕事で作られた道具以上には、目に見えない心地よさを生み出すことはできないということ。エアコンの暖房は、火鉢の炭火や薪ストーブの遠赤外線の体の芯まで染み込む暖かさに勝ることはないし、自然の風が鳴らす風鈴の音ほど柔らかいものはない。
今回企画した納涼会で体験していただく伝統的な道具は、まさにそういう手仕事でしか作ることのできない本物の涼しさを提供する道具たちです。
油団は敷くと室温が若干下がる魔法の夏敷ですが、それがどうしてそうなるのか、メカニズムはいまだ解明されていません。職人が受け継いでいる技術が全て。データで再現することはできません。
明珍火箸風鈴という、鉄の火箸をぶら下げた風鈴の音色は黒い鉄の火箸とは思えない軽やかな天使の羽音。これは熱した鉄を手作業で打つことで生まれる音で、鉄をただ同じ形に鋳造したところで、同じ音は出ないのだそうです。
火鉢クラブはそういったテクノロジーだけでは伝えられない「目に見えない何か」を伝えたいと思います。
地球環境が変わり、ここ数年の暑さは尋常ではなく、昔の涼み方では追いつかないという状況もあります。しかし、そうした環境の中でやむなく冷房を使うにしても、五感で感じる本物の涼しさとはどういうものか、その心地よさの感覚だけは失わないでいたいのです。
*写真:過去の納涼カフェで提供したびわ茶と梅干し。手ぬぐいは柿渋染め
【伝統技術を”今に生かすために”保存する】
古文の教科書にも登場する「徒然草」に「家の作りようは夏をむねとすべし」というフレーズがあります。冬には火を熾せばいいけれど、クーラーのない時代、夏の暑さはいかんともしがたく、かつては夏に合わせて家は作られました。そうした夏向きの家づくりの工夫は現代にも活かせるはずなのですが、現在の住宅は断熱・密閉の方向に発展し、夏はエアコンに頼り、夏向けの建物の造りや設えはほとんど忘れ去られてしまっているのが現状です。
今、日本の伝統的な暮らし方を実現することはなかなかに難しいことではありますが、それが潰えてしまっては、いざ復活させようとしてもなかなかに大変です。法隆寺の五重塔の心柱の耐震性の謎が今では分からないように…。
「油団」は掛け軸を作るときの「表装」という技術で作られています。
表装とは、書画を鑑賞し、保管するために、巻物状にした掛け軸などを作る技術。
茶の湯でもかかせない掛け軸の表装の技術を使って作られる敷物がこんなエコな効果を生んでいるのです!もっとそのメカニズムが研究されてもいいはず。こういう技術が、現代においていつなんどき役にたつかもわからない。なのに、油団はもはや日本で一軒しか作るところがありません・・・。消えてしまったらおしまい。積み上げられてきた技術はやはりそうそう簡単に捨ててはいけないと思うのです。
「火鉢クラブ」は火を囲むことの楽しさを感じていただくことを目的に始めましたが、火鉢を入り口に日本の伝統的な和室の暮らしを辿っていくと、この「油団」のような面白いものと出会うことがあります。それを発信しない手はありません。火を囲むことは伝統の技術を伝えることにも繋がっています。
とりあえず、火鉢クラブがやれることは「火を絶やさない」こと。そのために、現代の暮らしの中でどう活かせるかということを常に考えながら、伝統というものを紹介していければと思います。今回のプロジェクトもそうした活動の一環です。

最後になりましたが・・・

「納涼会」のプロジェクトなのに「火鉢」ってどういうこと?と思われた方もいらっしゃると思いますので、ここで「火鉢クラブ」について少しご説明いたします。
火鉢クラブは火を囲んで語り合う場を提供しています。寒い時期には炭火を囲んで食べたり飲んだりしながら語り合う火鉢カフェや火鉢バーなどのイベントを開催します。火を囲むのが暑い夏には、七輪を使ったプチ縁日や今回のプロジェクトのような納涼会を企画したりもします。火だけにこだわらず、いろんな形で季節感を楽しむ活動をしています。
「火」は自然と人類の文明をつなぐ存在です。
「火を囲むこと」は暮らしの中に自然を持ち込むことのもっとも原始的な形。火を囲む時、人はほっと安心するように、暮らしの中に自然を感じる時、人は心地よさを感じるのだと思います。目の前の景色はビルばかりでも、吹いて来た風に潮の香りがのっかっているとか、歩道に街路樹の影がきらめいてるとか、そこにふっと自然の面影を垣間見るとき、人は心地よさを感じる。現代的な暮らしの中で懐かしい心地よさを忘れないために、火鉢クラブでは、季節ごとの自然を感じられるイベントを企画します。
今回のプロジェクトは、そんな火鉢クラブ活動の夏企画。いわば夏フェスなのです。

【あらためて「火鉢クラブ」について〜そこに火があるということ】
ここから「火鉢クラブ」について、もう少し詳しくご説明しようと思います。
火鉢クラブの根幹となるコンセプトは「火を囲む」ことです。
原始から人々は「火を囲む」ことで共に身を護り、暖をとり、食事の準備をし、火を囲むことから共同体は生まれ、厳しい環境の中をサバイバルしてきました。「火を囲む」ことは社会の原点とも言えるのではないでしょうか。皆で火を囲む機会がなくなったことは、人と人のつながりを希薄にしたのかもしれないと感じます。
現代の分断された社会の中で、いろんな人が壁を超えて寄り添える場所を求めている気がします。そんなとき、「火を囲む」ことは、きっと、コミュニケーションのあり方を考えるきっかけを与えてくれると思うのです。
*写真:過去の活動〜炭火イベント「月夜の七輪Bar@toco.」告知フライヤー

キャンプファイヤーなど、火を囲むとワクワクと心が浮き立ちます。これまでやってきた火鉢カフェでも実感していますが、火を囲むと初対面の人の間の心の壁は溶け、いつのまにか会話の花が咲く。火を囲める場というのは、人と人が結びつく最高の場だと思います。
*写真:能登焚き火ツアー(2019年5月)
とはいえ、火鉢カフェは人と人のつながり云々以前に、ただ居心地の良いカフェとして気軽に足を運んでもらえる場所になればいいと思っています。火鉢でお餅を焼きたいだけでも、デートで使っても、いろんなことを考えすぎて悩んだ時に赤い炭火をじっと眺めるのだってかまわない。友人と激論する場になったっていいし、宿題やりに来たっていい。
でも、誰がどういう理由でやって来ようが、そこに火があることは全ての人をホッと安心させてくれるのではないかと思うのです。
*写真:月夜の七輪バー@toco.
「火鉢カフェ」というオシャレなんだかダサいんだか分からない名前。それが誰でも気軽に入れる敷居の低さを生んでくれればいいなと思います。そこに火があるというだけで生まれる新しい人と人のつながりを期待しています。
独り静かに本を読んでいたって独りぽっちじゃないと思える。火がある場所は人にそんな安心感を与えてくれると信じています。

【火鉢クラブは「心に火を灯す何か」を提供します】
大学卒業後、テレビ番組制作の仕事をしてきましたが、自分の目の前の人々に直接何かを伝えられる小さな場が欲しいと思っていました。イベントをやるカフェや本屋さんはすでにありますが、それを自分らしいものにするにはどうすればよいか。そして思いついたのが「火鉢カフェ」でした。
子どもの頃から火鉢のある家に住んでいましたし、アーケード商店街の中にありながら、お風呂も子どもの頃は五右衛門風呂で火をくべていました。家を建て替える余裕がなかったから、時代遅れな家に住んでいただけなのですが、そのおかげで、街の暮らしの中に火があった時代を知る私だからこそできる活動だと思ったのです。
テレビ制作の仕事の中で培った好奇心の赴くままに、かつ、テレビではなかなか実現しないニッチなテーマを「火を囲む」という和やかな場所に集まった人とともに楽しむ。そういう場所が作りたいと思いました。
居酒屋のごとくお客さん同士で自由に語り合うこともあれば、トークや音楽ライブ、寺子屋、ワークショップ、上映会など何でもあり。基準は面白いと感じるかどうか。
新しい知識や聞いたことの無い音楽が心に好奇心という火を灯す。そんな好奇心の秘密基地のような場所を作るのが目標です。
火を囲みながら、夏には涼しい風に吹かれながら、世の中の森羅万象の中から「心に火を灯す何か」を発見できたらと思います。
ちなみに、火鉢クラブのロゴの炭のマークは茶の湯で使う菊炭の断面です。実はその炭の美しさと炭焼きの奥深さに魅せられたことが火鉢クラブ設立の直接のきっかけだったりもするのですが、その話は長くなるので、ブログへのリンクを貼っておきます。

*写真:茶の湯で使う茶の湯炭、別名・菊炭 

【火鉢クラブのミニ冊子「FIRE」】
5月にはそんな火鉢クラブについて知ってもらうための「FIRE」という冊子も発行しました。これまでにも2冊の冊子を作っていますが、今一度、火鉢クラブの基本コンセプトを伝えるため、タイトルを「FIRE」と改め、新創刊しました。今後も定期的に発行し、油団や明珍火箸のような技術も伝えていければと思っています。納涼会ではFIREの増刊として「涼しさ」をテーマに、油団や明珍火箸風鈴について書ければと思います。

【これまでの活動】
◼︎火鉢カフェ、火鉢バー、七輪カフェの開催
火鉢クラブでは、東京都内のカフェやゲストハウスなどで、寒い時期には火鉢を囲んで語り合ったり、七輪で旬の原木しいたけを焼いたり、桜の時期にはその下でミニ七輪で焼き物をしながらお花見をしたりする「火鉢カフェ」や「七輪カフェ」を、イベントととして開催して来ました。毎回、その時の季節感を意識した趣向で、炭火を楽しんでいます。また、ここ1年半ほどは都内の喫茶店の夜の時間をお借りして、時々「火鉢バー」を開催。「火を囲む」ことで、初対面の人でもいつのまにか会話が弾むということを実感しています。
*写真:火鉢カフェin千駄木・記憶の蔵
ところで、私たち日本人は縄文時代の竪穴式住居の頃から、室内に火を持ち込み、火を囲んで暮らして来ました。日本の伝統文化の代表、茶の湯の「茶室」はこうした火を囲む文化の流れの中に位置付けられるのだそうです。茶室には湯を沸かすための炉がありますが、これこそ、室内で火を囲むという縄文時代からの文化の継承。そう考えると、「火鉢カフェ」という喫茶の場は、縄文から続く火を囲む文化を継承し、かつお茶を飲む、まさに日本の茶の湯の文化の現在形ではないかと思うのです。
今回のプロジェクトで勢いをつけて、将来、常設の「火鉢カフェ」を実現させたいと思います。
*写真:月夜の七輪バー@toco.

◼︎焚き火ツアー
今年の5月の終わりに能登半島の湯宿さか本に宿泊し、その庭で焚き火をやる焚き火ツアーを実施しました。
焚き火の火で能登のイカを使ったパエリアを作り、丸太のスウェディッシュトーチでポトフを温め、満天の星空の下、焚き火の火を囲んで語り合いました。語り合ったというよりは、火を眺めていたという方が正しいかもしれません。パチパチと火がはぜる音が心地よく、火をつけるまでの参加者の奮闘も楽しく、やはり火の力はすごいと実感した一夜でした。
また2回目の開催を検討したいと思います。

◼︎冊子発行
2015年「火鉢クラブ〜火鉢と七輪の基本のキ〜」発行
2017年「空飛ぶ火鉢」発行
2019年「FIRE vol.1〜火鉢クラブってなんだよ〜」発行
これまで3冊の冊子を発行しました。1冊目は火鉢と七輪や炭について紹介したもの。2冊目の「空飛ぶ火鉢」は火鉢や七輪の話にとどまらず、町の様々な季節の風景を切り取り、火に関わるものならなんでもありの冊子、そして3冊目の「FIRE」は、火鉢クラブの新たな出発に合わせて、改めて火鉢クラブとは何かを伝えるものにしました。不定期刊行ですが、資金が集まって、季刊くらいのペースで出せるようになるといいなと思っています。
暮らしの中の火の原点を考えることは、季節を感じる心地よい暮らしを考える事につながると思っています。火鉢クラブの冊子作りにおける無謀な野望は21世紀の新しい「暮しの手帖」を作ること。
「素敵」「快適」「便利」が突出した現代のライフスタイルメディアに批評を取り戻すことはできるのか?役に立つのか立たないのかわからないような情報の大切さを伝えられるのか・・・?
現在ある本家の「暮らしの手帖」も素晴らしいけれど、もっと実用的でない、でも、ある人たちにとってはとっても実用的だったりする不思議な暮らしの情報誌はできないだろうかと夢想します。例えば「空飛ぶ火鉢」では「ミトコンドリアは体内の火鉢」と題して、人間の代謝の元締めであるミトコンドリアの役割を紹介しました。よくよく読めば、これが有用なダイエット情報であり、健康情報であることがわかるのですが、一見しただけでは、役に立つようには見えないコラムです。この冊子には、誰もが見向きもしない皇居のお濠の土手に生える雑草の写真も掲載しました。皇居の周りを走るジョガーの足元にこんなに様々な草花が咲き乱れることに気づいている人はまだそんなにたくさんはいないはずです。
決して実用的ではないかもしれないけれど、心と体が気持ちいいと震えるような暮らしの一コマを切り取って紹介する。そんな冊子に「FIRE」を育てていければと思います。遠い遠い野望かもしれませんが・・・。

【このプロジェクトを成功させ、さらに実現させていきたいこと】
今回のプロジェクトを成功させ、次なる火鉢クラブの活動資金を得て、徐々に活動を本格化させたいと思っています。
●冊子「FIRE」の定期的な発行
●ホームページ作成(現在はブログ、SNSによる発信)
●焚き火ツアー第2弾
●予約制の火鉢カフェ(火鉢クラブの秘密基地)スタート
   *ニッチなトークイベントなど
●常設の火鉢カフェ設立
●その他、ミニイベントいろいろ
*火を愛でるナイト・・菊炭の美しい火を愛でながら焼き氷を食すナイト。マッチでキャンドルに火を灯し、火を炭に移していく過程も楽しみます。
*野点(のだて)とレコードの会・・野外にミニ七輪で湯を沸かし野点を楽しむ。トランク型のポータブルのプレイヤーを持って行ってレコードを聞きながら。
そのほか考えていることは色々ありますが、それはブログやSNS、冊子などで随時告知していきます。
【今回集まった資金の使い道】
集まった支援金からクラウドファンディングの手数料を引いた資金は「油団体験納涼会」の実施費用とそこで販売する冊子やグッズの制作費用に当てさせていただきたいと思います。実現した納涼会の入場料等の収益はこの先の火鉢クラブの活動資金に充てさせていただきます。
今後、火鉢クラブの活動を仕事にすることを考え、自らの人件費、協力者もボランティアではなく、些少なりとも謝礼と交通費を支払える体制にしたいと考え、予算も見積もりました。
納涼会については概算で以下のような予算を見積もっています。
●古民家使用料金(2箇所)約20万円
●油団貸し出し料金 約5万円
●油団・明珍火箸風鈴取材打ち合わせ費 約5万円
●冊子制作費(取材費・印刷費・デザインレイアウト費 500部)約20万円
●火鉢クラブキャラクターグッズ制作費(リターン含む)約20万円
●納涼会宣伝費(チラシ作成費ほか)5万円
●納涼会実施に必要なその他の経費
(協力者の人件費と旅費交通費、運搬費、油団以外の物品貸し出し・購入費、食材費など) 約25万円
●クラウドファンディング手数料 約10万円
納涼会へのご参加、開催資金ご協力何卒よろしくお願いいたします。
火鉢クラブは生まれ変わって再始動します!
2010年より8年間、趣味的な活動として細々と続けてきた火鉢クラブですが、このへんで、ちゃんと自らの仕事として収入を得られる活動にするべく、再始動したいと思います。そのキックオフイベントとして、この夏、8年前の原発事故後の夏に開催した「電気を使わない納涼会」を再び開催することにしました。

別に、納涼会開催資金の資金調達のお願いのページも作っております。そちらでは、なぜ今、納涼会をやって火鉢クラブを再起動するかということ、あらためて考えた火鉢クラブの未来など書き綴っております。できましたら、このページと合わせてご一読いただき、ご支援いただけるとありがたいです。

2019年7月16日火曜日

7月21日の火鉢バーは選挙速報ナイト

7月21日(日)の火鉢バー@隣町珈琲 ラスト2daysのラス前は、参院選開票速報をラジオで聞きながらの選挙速報ナイト。もちろん、選挙など関係なく、ただ語り合いたい方はそれでよし。自由に過ごしてください(すでに選挙関係なしのご予約もいただいてます)。
ところで、この火鉢バー、7月末で終了するのですが、一昨年10月22日、バーを始めたばかりの頃にも「選挙特番を見るナイト」というのをやっています。第48回衆議院総選挙。小池劇場、希望の党失速、立憲民主党躍進という、ファイヤーラジオでも言及したドラマのあった選挙戦でした。しかし、投票日はなんと台風で投票率は53.68%で与党圧勝。ちなみに民主党に政権交代した2009年の衆院選は69.28%。投票率が高ければ野党勝利もあるのですよね。

というわけで、台風に見舞われた2年前の衆院選選挙速報ナイトはお客さんは常連さんたった2人。喫茶の店長も含め4人で開票速報と台風の趨勢を見守りました。しかも、この日私は帰りの電車で、終電にもかかわらず自宅最寄駅を乗り越し、深夜の暴風吹きすさぶ見知らぬ遠い駅に一人立ち尽くすという事態に。その顛末をブログに書き残していますが、もう選挙どころじゃありません。当時の経済的な厳しさも相まって、なんともとほほな1日。でも、それがまたドラマチックでもあり、あれから2年弱、この火鉢バーで繰り広げられたいろんな出来事を思い返すのです。

私自身の経済危機は紆余曲折ありながら、結局また厳しい状況に立たされていて、今まさに0からの出発という感じなのですが、もうあと2回で火鉢バーを閉店するというこの時点でまた選挙があって、選挙速報を見るナイトをやるというのは、なんだか感慨深くもあります。新たな旅立ち感いっぱいです。投票当日がまた暴風雨にならないことをお空の星に願いつつ。たくさんのお客様に来ていただけることも願いつつ。お酒準備してお待ちしています!

よかったら、リンクのブログも読んでみてください。

<火鉢バー日記>
「緊急企画 選挙特番見るナイト開催!」(2017年10月21日)
「売り上げ2200円也と今夜選挙特番見るナイトのおしらせ」(2017年10月22日)
「台風21号と選挙特番見るナイトとギリギリな私」(2017年10月23日)

2019年7月12日金曜日

7月13日(土)の火鉢バーは23年越しの再会・神戸フロイン堂のパン祭り。

明日7月13日(土)火鉢バー開催します。
今日12日が私の誕生日なので、僭越ながらママの誕生会バーにしたいと思います。そして、この日は神戸岡本フロイン堂というパン屋さんの食パンとシチューを出したいと思います。お盆の納涼会の準備で昨日鯖江に、今日、姫路に行ったのですが、その帰りにこのパンを買おうと思って、神戸に寄りました。実はこのフロイン堂は冊子「FIRE」に掲載したい思い出のお店でもあるのです。


前回このお店に伺ったのはなんと23年前。阪神・淡路大震災から1年後の復興の様子をテレビ番組で取材したときのことでした。

そのとき、神戸のいろんな人やお店を取材しましたが、ポートタワーに灯りが灯ったことが復興の象徴だとおっしゃっていたのが印象に残っています。火が灯ることが人にどれだけ勇気を与えるかということを知りました。まさに、これは火鉢クラブの、そしてファイヤーラジオの原点のような体験です。

「フロイン堂」はその時に取材したお店の一つです。
ここは今もレンガの窯でパンを焼いていますが、たしか、震災の時もこのパン焼き窯は崩れることなく、被災した人々に薪でパンを焼いて提供したというお話を伺った記憶があります。

ここでも、火が人々の力になっていました。

今回、久しぶりに神戸に立ち寄る機会を得て、どこへ行こうと考えた時に、この「フロイン堂」が頭に浮かびました。23年の時を経て、あのレンガの窯はどうなっているだろうかと思ったのです。

そして、訪ねた神戸は岡本。めざすフロイン堂は駅のすぐ近く。駅周辺はカフェや雑貨屋さんなどが立ち並ぶおしゃれスポットとなっておりました。こんなにお店多かったっけ・・・。漠然とした記憶ですが、比較的静かな通りに、ぽつんと小さな町のパン屋さんがあるといった印象だったような・・・。やはり、23年の時は街を変えます。

しかし、当のフロイン堂自体はあまり変わることはなく、そこにありました。表のガラス戸はかつては木枠だったと思いますが、さすがにそれはサッシに変わっていたものの、2階の窓は昔のままでしたから、それを見ていただければ、かつての入り口のガラスの引き戸がどういうものだったか想像がつくと思います。フロイン堂は賑やかに変わった岡本の町並みにあって、そんな昔懐かしい姿を残して営業していました。

23年前当時から人気だった食パンは売り切れ必至のため、予約しておきました。3時半ごろに訪ねた時にはすでにほかのパンも売り切れ寸前。今も人気は健在です。
お店の人に、23年前に取材に来たことを伝え、今もレンガの窯で焼いているのかを尋ねると、今も昔の窯を使っているそうで、こころよく窯のある作業場に案内して下さいました。ほぼ、今日のパン焼きは終わったところだったようです。


窯の前にはかつて取材の時にもいらしたご主人とその息子さんが。ご主人の竹内善之さんはもう86歳だそうです。

みなさんお元気で、あい変わらず美味しいパンを焼き続けていらっしゃいましたが、ひとつ変わったことがありました。

実は10年前から熱源が薪からガスに変わっていたのです。
理由を問うと、薪が手に入らなくなったということでした。

パン焼きには火力の強い松の木が適しているのですが、松枯れなどの影響で手に入らなくなり、次に適するクヌギの木は、現在、原木椎茸の原木用に使われることが多く、なかなか薪として流通しなくなっているそうです。原木椎茸の原木として使われるのも悪いことではないですから、これはやはり、林業の衰退と、一時代、杉の植林をやりすぎて、広葉樹林を壊してしまったことに原因を求めねばならないでしょう。

「やはり、薪の炎のほうがパンにはいい。なぜかわからないけど、炎の力は大きい。」

善之さんはそうおっしゃっていました。もちろん、今もフロイン堂のパンは美味しいのですが、それは火力がガスに変わってから、それまでと同じように美味しいパンを作るため、試行錯誤された結果のようです。

職人の世界には「なぜかわからないこと」が多い。

そして、そのなぜかわからないことが、わかっている情報で作るものよりも確実に良質なのです。それは、今回の納涼会準備の旅で訪ねた油団の表具店でも、明珍火箸風鈴の工房でも感じたことで、いくらAIや3Dプリンターが発達しても、人間の手仕事は伝えていかねばならないということを確信しました。

ふらりと訪ねた「フロイン堂」でしたが、挨拶もそこそこに突然話しかけた私に、こんな話をしてくださるとは、生涯を通じてパンを焼き続けている86歳はやはりいろんな意味で達人なのでした。

というわけで、あと3回を残すこととなった火鉢バー@隣町珈琲。明日13日は、このフロイン堂の食パンを焼いていただければと思います。定番だったビーフシチューとともに味わってください。

レンガの窯で焼いた神戸でも屈指の人気を誇る食パン。
23年前の取材の時は、帰りの新幹線の中で我慢しきれず、同行のスタッフと、車内販売のワインを買って楽しく食したのを憶えています。1年目の神戸の復興は目覚ましいものがあり、東日本大震災から8年目の今のような閉塞感はありませんでした。

そんな思いも、東日本大震災直後の夏にやった油団納涼会を、東京五輪を来年に控えた今再びと思った理由のひとつにあるかもしれません。

1本(3斤分)しかないので、12枚くらい取れるかなあ…って感じです。ぜひ食べにきてくださいね!お待ちしてます!

この話はファイヤーラジオでもしたいなあ・・。
冊子「FIRE」の次号あたりでも書きたいですね!



火鉢バー@隣町珈琲
品川区中延2−6−2隣町珈琲にて18時半〜22時まで。