2019年7月12日金曜日

7月13日(土)の火鉢バーは23年越しの再会・神戸フロイン堂のパン祭り。

明日7月13日(土)火鉢バー開催します。
今日12日が私の誕生日なので、僭越ながらママの誕生会バーにしたいと思います。そして、この日は神戸岡本フロイン堂というパン屋さんの食パンとシチューを出したいと思います。お盆の納涼会の準備で昨日鯖江に、今日、姫路に行ったのですが、その帰りにこのパンを買おうと思って、神戸に寄りました。実はこのフロイン堂は冊子「FIRE」に掲載したい思い出のお店でもあるのです。


前回このお店に伺ったのはなんと23年前。阪神・淡路大震災から1年後の復興の様子をテレビ番組で取材したときのことでした。

そのとき、神戸のいろんな人やお店を取材しましたが、ポートタワーに灯りが灯ったことが復興の象徴だとおっしゃっていたのが印象に残っています。火が灯ることが人にどれだけ勇気を与えるかということを知りました。まさに、これは火鉢クラブの、そしてファイヤーラジオの原点のような体験です。

「フロイン堂」はその時に取材したお店の一つです。
ここは今もレンガの窯でパンを焼いていますが、たしか、震災の時もこのパン焼き窯は崩れることなく、被災した人々に薪でパンを焼いて提供したというお話を伺った記憶があります。

ここでも、火が人々の力になっていました。

今回、久しぶりに神戸に立ち寄る機会を得て、どこへ行こうと考えた時に、この「フロイン堂」が頭に浮かびました。23年の時を経て、あのレンガの窯はどうなっているだろうかと思ったのです。

そして、訪ねた神戸は岡本。めざすフロイン堂は駅のすぐ近く。駅周辺はカフェや雑貨屋さんなどが立ち並ぶおしゃれスポットとなっておりました。こんなにお店多かったっけ・・・。漠然とした記憶ですが、比較的静かな通りに、ぽつんと小さな町のパン屋さんがあるといった印象だったような・・・。やはり、23年の時は街を変えます。

しかし、当のフロイン堂自体はあまり変わることはなく、そこにありました。表のガラス戸はかつては木枠だったと思いますが、さすがにそれはサッシに変わっていたものの、2階の窓は昔のままでしたから、それを見ていただければ、かつての入り口のガラスの引き戸がどういうものだったか想像がつくと思います。フロイン堂は賑やかに変わった岡本の町並みにあって、そんな昔懐かしい姿を残して営業していました。

23年前当時から人気だった食パンは売り切れ必至のため、予約しておきました。3時半ごろに訪ねた時にはすでにほかのパンも売り切れ寸前。今も人気は健在です。
お店の人に、23年前に取材に来たことを伝え、今もレンガの窯で焼いているのかを尋ねると、今も昔の窯を使っているそうで、こころよく窯のある作業場に案内して下さいました。ほぼ、今日のパン焼きは終わったところだったようです。


窯の前にはかつて取材の時にもいらしたご主人とその息子さんが。ご主人の竹内善之さんはもう86歳だそうです。

みなさんお元気で、あい変わらず美味しいパンを焼き続けていらっしゃいましたが、ひとつ変わったことがありました。

実は10年前から熱源が薪からガスに変わっていたのです。
理由を問うと、薪が手に入らなくなったということでした。

パン焼きには火力の強い松の木が適しているのですが、松枯れなどの影響で手に入らなくなり、次に適するクヌギの木は、現在、原木椎茸の原木用に使われることが多く、なかなか薪として流通しなくなっているそうです。原木椎茸の原木として使われるのも悪いことではないですから、これはやはり、林業の衰退と、一時代、杉の植林をやりすぎて、広葉樹林を壊してしまったことに原因を求めねばならないでしょう。

「やはり、薪の炎のほうがパンにはいい。なぜかわからないけど、炎の力は大きい。」

善之さんはそうおっしゃっていました。もちろん、今もフロイン堂のパンは美味しいのですが、それは火力がガスに変わってから、それまでと同じように美味しいパンを作るため、試行錯誤された結果のようです。

職人の世界には「なぜかわからないこと」が多い。

そして、そのなぜかわからないことが、わかっている情報で作るものよりも確実に良質なのです。それは、今回の納涼会準備の旅で訪ねた油団の表具店でも、明珍火箸風鈴の工房でも感じたことで、いくらAIや3Dプリンターが発達しても、人間の手仕事は伝えていかねばならないということを確信しました。

ふらりと訪ねた「フロイン堂」でしたが、挨拶もそこそこに突然話しかけた私に、こんな話をしてくださるとは、生涯を通じてパンを焼き続けている86歳はやはりいろんな意味で達人なのでした。

というわけで、あと3回を残すこととなった火鉢バー@隣町珈琲。明日13日は、このフロイン堂の食パンを焼いていただければと思います。定番だったビーフシチューとともに味わってください。

レンガの窯で焼いた神戸でも屈指の人気を誇る食パン。
23年前の取材の時は、帰りの新幹線の中で我慢しきれず、同行のスタッフと、車内販売のワインを買って楽しく食したのを憶えています。1年目の神戸の復興は目覚ましいものがあり、東日本大震災から8年目の今のような閉塞感はありませんでした。

そんな思いも、東日本大震災直後の夏にやった油団納涼会を、東京五輪を来年に控えた今再びと思った理由のひとつにあるかもしれません。

1本(3斤分)しかないので、12枚くらい取れるかなあ…って感じです。ぜひ食べにきてくださいね!お待ちしてます!

この話はファイヤーラジオでもしたいなあ・・。
冊子「FIRE」の次号あたりでも書きたいですね!



火鉢バー@隣町珈琲
品川区中延2−6−2隣町珈琲にて18時半〜22時まで。

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