2017年7月25日火曜日

「東京花鳥風月写真展その1〜もうひとつの世界〜」開催します!8月8日〜20日


会報誌「空飛ぶ火鉢」には私が火鉢クラブを始めて以来撮りためた東京の写真も少しずつ掲載しています。東京の都心で撮影した都会の自然の姿「東京花鳥風月」です。

今回はその写真の中から上野不忍池で撮影したものをセレクトして写真展をやろうと思います。
タイトルは「もうひとつの世界」。
不忍池の水面に映った「もうひとつの世界」です。

ずっとこのあたりに住んでいて見慣れたはずの蓮池。多くの人がカメラのレンズを向けるのは華が咲く時期だけれど、水面が蓮で埋め尽くされる前や枯れた後、水の上には不可思議な世界が広がります。それに気づいたのは2012年の5月。水面にプカプカと浮かぶ芽吹いたばかりの小さな蓮の芽をカメラのレンズで切り取って見えてきたのはそれまで気づかなかったもうひとつの世界でした。



不忍池のほとりに立つ高層マンションの周りを浮遊する緑色の飛行物体。風が吹けば水面は揺れ、時折生まれる水紋で、この世界は揺れ動く。そんな風景に立ち止まりながら、私たちの現実の世界を揺り動かすものは何なのかと考えました。



水中生物の顕微鏡写真のような世界も発見しました。いや、青空に向けて飛び立っていく未確認生物ベビーロータスといったほうがいいでしょうか。

発見したもうひとつの世界には芽吹いたばかりの蓮の生命のパワーが満ち満ちていました。





青空に飛び立つ小さな蓮の芽が見られるのは花よりも短いほんの一時期で、しかし、来年の同じ時期になればまた再び同じ風景が水面に広がる。真夏にピンクの大輪の花を咲かせるだけではない、蓮には1年間の様々なドラマがあるのです。


早春には何もない池の水面に夏にはあれだけの蓮が生い茂り、やがて枯れ、枯れた蓮は人の手で刈られれて、また何も無くなった水面に、晩春、再び小さな芽が芽吹き始める。池の上に繰り返される命の営みは太古からこの地球上でずっと続いてきた命の営みの象徴のようで、輪廻という言葉さえ浮かびます。

火鉢クラブを始めた頃から上野公園周辺や皇居のお濠の土手など、都心の自然を切り取る写真を撮り始めていましたが、この不忍池での発見で「もうひとつの世界」というテーマを意識し始めました。


ずっと存在しているにもかかわらず、意識することで初めて見えてくる世界がある。


同じ世界に生きていても、戦火の下にある人もいれば、摩天楼のてっぺんから大都会を見下ろす人もいる。普段の暮らしの中でどれだけそういう人たちのことを思い描けるでしょうか。国会での論戦ひとつをとっても、与野党まったく話はかみ合わず、まるで別の次元に住む人々のやりとりのよう。人は見たいものしか見ない生き物なのかもしれません。目の前にあると認識しているものでも、光の当て方や見る角度で全く違うものに見え、自分の認識が変われば世界は変わる…。撮影した写真を逆さにしたり、横にしたりしながら見えてくる新しい風景に、そんな人間世界の夢と現の曖昧さを感じたりしました。


2014年秋、10年前に治療が済んだはずのがんが再発していると言われ、自分の命の先行きが揺らいだ時にも、この蓮池の水面は私にさまざまな姿を見せてくれました。


そこにあったのは、まるでダリやマグリットのシュールレアリスムのような、不条理だけど明るい画面。もはやどちらが本当の蓮なのか水面に映っている姿なのかも判然としません。画面を逆さにすることで、目の前に実際に広がる風景は現実のものとは思えない不思議な風景になります。


がん再発ということを世間で言われている額面通りに捉えたらどうしたって気分は落ち込みます。でも、落ち込んでばかりもいられない。私は「がんと闘う」ことをやめ、「共存」するつもりで、この風景のように”有り得ないけど有り得る”「不条理だけど明るい」もうひとつの世界を生きることにしました。


仕事を続けるために副作用のある治療は避けました。お金もなかったので、高額医療も省き、いろいろ調べた末に経済的にも精神的にも自分で可能な方法を選びました。それは自分の視野に入ってきた、自分の力で発見した私にとってのもうひとつの世界です。


あれから3年。幸いなことに、がんの勢力は増すこともなくむしろ勢力を弱め、日々、自転車に乗って上野、浅草、谷根千を走り回り、火鉢クラブの活動も再び勢力的に行おうとしています。さすがに更年期と言われる年齢、多少の体調不良はご愛嬌。ここ数年のフリーランス稼業で会社勤めや満員電車、徹夜なんてのはちょっと厳しいかななんて感じていますから、是非ともこの写真展も成功させて、フリーとしての仕事の幅を広げたいなんていう自分にとってのもうひとつの世界も妄想しています(笑)。




多分、人それぞれのもうひとつの世界があるのだと思います。その人の人生が培った独自の見方や考え方が作る未来。明るい話題の少ない、閉塞という言葉の響が届き始めた昨今の世の中で、自分なりのもうひとつの世界を見つけられた時、それこそが未来への脱出口になるのではないか。ここ数年間、不忍池の命の繰り返しを自らの命に重ねながらそんなことを思いました。


もちろん、いつもそんなことを意識しながら写真を撮っていたわけではありません。ほとんどは、ただ美しい風景を見つけたことに感激し、興奮しながらシャッターを切っているだけだったりします。しかし、その興奮はやはり不忍池の蓮の命の力ゆえなのだろうと思います。


今回、これらの写真の一部は透明なシートに印刷し、厚みのあるアクリル板と合わせて、水面を覗き込むような展示を試みてみようと思っています。




また、モノクロの世界も一部展開しようかと急に思い立ち、数点展示しようと思います。

 



 ちょうどお盆の時期を挟んでこの写真展をやることも、偶然ではありますが、何か必然のような気もしています。あの世とこの世がつながるこの時期に、また日本においては戦没者を追悼するこの時期に、私たちの前にはまだ見えていない世界があること、でも、見ようと思えば見ることのできるもうひとつの世界あることを感じていただければと思います。


もちろん、写真が売れれば、その収益は常設の火鉢カフェ設立に向けて活用させていただきたいと思います。


会場のReadin'Writin'もとても素敵な本屋さんです。ピンクの花が咲き乱れる夏の上野不忍池も銀座線で2駅。暑い盛りではありますが、ぜひ浅草まで足をのばしてみてください。


会期   2017年 8月8日(火) 〜20日(日) open 12:00~18:00  close 月曜日

会場   BOOK STORE  Readin’Writin’
住所   東京都台東区寿2-4-7 メトロ銀座線田原町駅
  tel    03-6321-7798
webサイト readinwritin.net

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